お名前: 四角五角
藤田まこと主演「明日への遺言」を観てきました。
物語はBC級戦犯として横浜で裁かれた岡田資の法廷闘争を描いた作品です。 彼が戦犯として裁かれた罪状はB-29搭乗員が捕虜となった際、ジュネーブ条約に基づいた捕虜扱いをせずに処刑した事でした。岡田資は彼らを正式な捕虜ではなくハーグ条約を違反し、無差別爆撃を実行した罪人として処断したと主張した。死刑を覚悟しての論争を岡田は法戦と名付け、その罪の全てを一身に受けようと法廷に立つのであった。
この裁判についての客観的な事実を私は知りませんが、劇中でも語られていたとおり極東裁判のなかにあって公正な裁判であったと思います。それは、裁判官と検察も米軍が行った空襲を黙殺せずにいた事。他の裁判でも同様の事(B-29搭乗員の処刑)が取り沙汰されたらしいが、そのほとんどが無視され、処刑に関わった人全てが死刑になった事からみても、岡田資一人が死刑で終わったこの裁判は異例中の異例と言える。しかも、結審後に検察側の人までも岡田の助命嘆願をしたというから岡田の裁判中の態度が如何に立派であったか想像できる。更には彼の刑を執行するにあたり幾人もの関係者から絞首刑ではなく軍人として名誉ある銃殺にすべきであるという要望書が出ていたが、マッカーサーがそれを認めなかった事で絞首刑のままであったが、ここにも彼の姿勢が多くのアメリカ人に感銘を与えたことが分かる。
作品も終盤に掛かる時、裁判官がアメリカの軍法を持ち出して戦時中の復讐を認めている事を指摘し、岡田の行為を復讐としてアメリカ軍法にも認められていた行為として減刑を示唆するが、岡田はその暗黙の行為を拒絶しあくまで軍律に則ってB-29乗務員を処罰したと主張する姿は感動しました。あと、刑務所の風呂場で部下と共に「ふるさと」を歌うシーンは切ないですね。全員死刑になるかも知れない状況に合っての「ふるさと」を歌う。どんな心情だったろう。私の想像を超える程の感情が歌に込められていたに違いないし、作品最後に岡田が死刑の執行い向かう時、獄中は誰ともなく歌う「ふるさと」に溢れるシーンは何とも言えないものがありました。
刑場を行く時の最後の残した言葉が「ご機嫌よう…」死を目前にした男の、なんと静かで落ち着いた言葉なのだろう思います。
岡田資を演じた藤田まこと。実直で静かな演技力は観ていて安心感があり、情の深い振る舞いはさすがベテランと思わせます。でも、実年齢として岡田資と藤田まことでは10歳以上の差がありますが、これは無視します(^^;)ついでに言うとパンフに載っていた岡田資の顔はなかなか2枚目です。岡田資の妻を演じた富司純子。劇中はただ法廷の傍聴席から夫を見つめるだけの台詞のない役でしたが(ナレーションをしています)、ただ一途に夫を信じる妻の姿を好演していました。
逆に弁護士や検察、裁判長を演じたアメリカの役者さんはこの作品に出演した事をどう思ったでしょうね。感銘を受けたという言葉をパンフには載せています。そして、仮にこの作品をアメリカで公開したらどんな反応があるか興味深いです。
なんにせよ、責任から逃げようと四苦八苦する人が多い中、こうして責任から逃げることなく、むしろ部下の責任は上司の責任として一身にそれを負おうとする姿は立派というには言葉が足りなさすぎるくらいに眩しい姿勢ですね。
あえて難点を言えば全編を通じてのナレーションを担当した竹野内豊。抑揚をわざと押さえてナレーションをしてるのかも知れませんが、どうにも歯切れの悪い彼の口調は作品の雰囲気に合わない気もしました。
蛇足
なんとも言いようがないのは、東京大空襲を指揮したカーチス・ルメイは後に自衛隊創設の功労者として一等旭日大綬賞を受けている。
評価
☆×3>感動!
[2008年04月08日00時37分]
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お名前: 四角五角
観てからずいぶん時間が経ってしまい、もうほとんど上映しているところがないですが「九転十起の男3」と「明日への遺言」の感想です。
「九転十起の男3」を観てきました。
この作品は京浜工業地帯の礎を作った明治の男、浅野宗一郎の後半生を描いたものです。世界大恐慌を降り越え、鶴見川河口を埋め立てて工業地帯を作り、人材育成の為の学校を作った人です。
主演の寺田農。この映画を観ようと思ったのは、ポスターだったかの絵で、寺田農の笑う横顔に惹かれたからですが、やはりベテラン俳優は上手ですね。雰囲気が良く出ていました。そして、浅野宗一郎の理解者であり、出資者である安田善治郎を演じる「」も渋くて良かったですね。
ただ、低制作費なのかオールロケ。しかも、そのロケ地も山下公園とか県庁とかあまりお金がかからないところばかり。劇場映画と言うよりはNHKの歴史番組とかの再現フィルムみたいな出来でしたね。
偉人伝だからいかにも先見の明を持った人と描かれていますが、実際のところは分かりません。でも、国家事業ではなく私人が明確なビジョンを持って国家に尽くした明治という時代のすさまじいエネルギーに驚かされます。
評価
☆×1>料金分の価値はあり
[2008年04月08日00時31分]
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